書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

ハインリヒ・フォン・クライスト『ミヒャエル・コールハースの運命』

ミヒャエル・コールハースの運命―或る古記録より (岩波文庫)

ミヒャエル・コールハースの運命―或る古記録より (岩波文庫)

 馬商人ミヒャエル・コールハースは、公子ウェンツェル・フォン・トロンカによって不当に馬を横領され、台無しにされてしまう。この件を宮廷に訴えるが相手にされない。憤ったコールハースは、ウェンツェルから賠償を得るため、暴力を以って公子に迫る。

 鬼気迫るストーリー展開で読者をとらえて放さない傑作。とりわけコールハースが賊徒と化して復讐を求め戦うくだりは圧巻。「或る古記録より」という副題どおりの記録調のシンプルな文体が、かえってコールハースの異常な情熱の描写を引き立ていて、非常によい。古めかしく(実際古めだが)硬質だが読みやすい訳文も、いかにも「古記録」を読んでいる感じを出してくれている。終盤になって展開がやや失速するのが惜しいところ。