書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

古龍『楚留香 蝙蝠伝奇』三巻

楚留香 蝙蝠伝奇〈上〉 (小学館文庫)

楚留香 蝙蝠伝奇〈上〉 (小学館文庫)

楚留香 蝙蝠伝奇〈中〉 (小学館文庫)

楚留香 蝙蝠伝奇〈中〉 (小学館文庫)

楚留香 蝙蝠伝奇〈下〉 (小学館文庫)

楚留香 蝙蝠伝奇〈下〉 (小学館文庫)

 けっして人を殺めず、去るときは残り香をおいていくという侠盗・楚留香を主人公とした、全八部にわたるシリーズ。小学館文庫版はその第四部『借屍還魂』と第五部『蝙蝠伝奇』の翻訳。死んだはずの令嬢が生き返り、しかも心は別人のものになっていた、というオカルトミステリ『借屍還魂』が上巻、海のかなたにあるという蝙蝠島と、そこを支配する蝙蝠公子をめぐる冒険譚『蝙蝠伝奇』が中・下巻に収められている。

 『借屍還魂』は、いかにもといった感じの色男・楚留香があばずれ女の前でたじたじとなる場面が楽しく、また「天下第一剣客」薛衣人との決闘の描写は読ませる。『蝙蝠伝奇』のほうは、武侠小説らしい剣戟シーンこそ少ないものの、次から次へといわくありげな人物が登場し、事件が続々と起き、楚留香たちが尋常でなく追い詰められる場面が多いので、一気に読めてしまう。また、楚留香とその悪友・胡鉄花、張三とのかけあいも愉快。


 期待通りの面白さだったが、個人的には『陸小鳳伝奇』のほうが好みかもしれない。こちらのほうは現在も新刊で手に入るので、よければ手にとって欲しい。

金鵬王朝 陸小鳳伝奇シリーズ 1

金鵬王朝 陸小鳳伝奇シリーズ 1