書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

イヴァン・ツァンカル『使用人イェルネイと彼の正義』

 本邦初のスロヴェニア文学の翻訳らしい。作者は1876年生れだからまあ古典の範疇かな。

イヴァン・ツァンカル作品選

イヴァン・ツァンカル作品選

だが、俺は神の使いに選ばれたわけじゃないから、物もらいでいるほうがいい。正義が俺を打ちのめしても俺は笑い返すさ。(132ページ)

 農場主シータルの使用人イェルネイは、シータルの死後、跡を継いだ若主人のシータル(父と同じ名前)と対立し放逐される。これを不当だと憤ったイェルネイは、正義を求めて各地を旅歩き、ついにはウィーンの皇帝のもとを訪れるが――。

 これはちょっと……書き方が直截すぎていまひとつかな。解説によると、もとはプロパガンダを目的として書かれた小説らしいから、社会批判が露骨なのも仕方ない面もあるが。しかし、イェルネイが単純すぎるのは、まあいいとしても、若いシータルや裁判官らの、いかにも小者然・悪玉然とした描かれ方は、さすがにどうにかならんかったのか、と思わせられてしまった。