イヴァン・ツァンカル『使用人イェルネイと彼の正義』
本邦初のスロヴェニア文学の翻訳らしい。作者は1876年生れだからまあ古典の範疇かな。
- 作者: イヴァンツァンカル,Ivan Cankar,Ivan Godler,イヴァンゴドレール,佐々木とも子
- 出版社/メーカー: 成文社
- 発売日: 2008/03
- メディア: 単行本
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だが、俺は神の使いに選ばれたわけじゃないから、物もらいでいるほうがいい。正義が俺を打ちのめしても俺は笑い返すさ。(132ページ)
農場主シータルの使用人イェルネイは、シータルの死後、跡を継いだ若主人のシータル(父と同じ名前)と対立し放逐される。これを不当だと憤ったイェルネイは、正義を求めて各地を旅歩き、ついにはウィーンの皇帝のもとを訪れるが――。
これはちょっと……書き方が直截すぎていまひとつかな。解説によると、もとはプロパガンダを目的として書かれた小説らしいから、社会批判が露骨なのも仕方ない面もあるが。しかし、イェルネイが単純すぎるのは、まあいいとしても、若いシータルや裁判官らの、いかにも小者然・悪玉然とした描かれ方は、さすがにどうにかならんかったのか、と思わせられてしまった。