書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

温瑞安『剣気長江・両広豪傑』

剣気長江・両広豪傑
温瑞安 著
花城文芸出版社
2001年12月

 巨岩の上に、風雨の中、釣り糸を垂らしている老人が確かにいた。
 この老人は確かに、昼間流されていく舟を片手で止めた鉄衣の老人でいった。
 老人は眉も髭も白く、黒の衣は鉄のよう。長江に臨む、川の飛沫が跳ねかかる巨岩の上に座り、じっと動かず、視線もずらさずに、言った。「来たか」
 トウ玉函が言う。「来ましたよ」
 鉄腕神魔は淡々と言う。「わしは三人の手下を失った。お前たちは補償をしてくれねばならぬ」
 左丘超然が首を振る。「もし我らがそれを望まなかったら?」
 雨はいよいよ激しくなる。この怠惰な男も、地下に根をはった草のように、風雨によって抜かれはしない。
 鉄腕神魔は言う。「望まないなどと言えるのか?」
 唐柔が静かに言う。「望まないんじゃない、承知しないのですよ」
 鉄腕神魔は天を仰いで、長江の怒涛の流れのように笑い、鬼神のように声を上げた。「お前たちがわしの敵なものか」

 温瑞安の初期作『神州奇侠』シリーズの第一部と第二部。浣花剣派の三男坊簫秋水は、義侠心から天下一の大結社「権力幇」の幹部・鉄腕神魔と戦う。以後、簫秋水と権力幇の長い戦いが繰り広げられる。

 これはある意味凄い。何が凄いって、370ページ全部にわたって、ほとんど戦闘場面しかない。最初の戦闘場面を読んだときは、うむうむこれだ、これが読みたかったんだと思ったものだが、さすがに本の半分をすぎたあたりから飽きてきた。敵役がいちいち強そうなのと、演出がうまいので盛り上がることは盛り上がるのだが、いかんせんストーリーの展開が単純すぎる。
 このシリーズ、まだ三巻残っているんだが、どうしたものか。


 ところで、印刷不鮮明なところや誤植がやたら多かったのだが、これが噂に聞く海賊版というやつなのだろうか。