スタニスワフ・レム『泰平ヨンの航星日記』
復活できるかな? 私は電車に乗らないとまともに本が読めない、ということはわかった。
泰平ヨンの航星日記〔改訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF レ 1-11)
- 作者: スタニスワフ・レム,John Harris,深見弾,大野典宏
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/09/05
- メディア: 文庫
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「雨雲が、蒸気機関のあの世での存在形態だってことははっきりしてるんだ。だったら、かんじんなことは、蒸気機関と水蒸気のどっちが先に存在してたかをはっきりさせることじゃないのか? 絶対に蒸気が先だと思う」(199ページ)
宇宙飛行士・泰平ヨンがによる、宇宙と時間の旅の記録(を編集したもの)。旅先で遭遇した奇天烈な生き物や出来事について語る。
『宇宙創世記ロボットの旅』と同系列のナンセンス・ユーモアSF。上に引用した会話をはじめ、調理に失敗して船外に投げ捨てたサーロインステーキが、人口衛星状態になって宇宙船のまわりをぐるぐる公転するとか、宇宙船を襲う肉食馬鈴薯とか、火山の爆発に船体を後押しさせて小惑星から脱出するとか、シュールなギャグが全編にわたって冴えまくる。「第8回の旅」で地球を惑星連合に迎え入れるかどうか議論する宇宙人たちとか、「第20回の旅」での歴史改変の試みあたりには、いまひとつ新鮮味を感じられなかったし、「第21回の旅」の宗教議論あたりは頭がくらくらして途中でついていけなくなったりしたのだけれども、笑えて、しかも刺激的な作品集には違いない。作者買いして後悔はない。
「泰平ヨン」シリーズの続刊に期待。