書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

パトリシア・マキリップ『茨文字の魔法』

茨文字の魔法 (創元推理文庫)

茨文字の魔法 (創元推理文庫)

 レイン十二邦には王の崩御若い女王の即位で不穏な空気がただよっていた。図書館で書記として働くネペンテスは、魔術学校の学生ボーンから茨のような文字で書かれた書物を預かる。ネペンテスは書物の研究を進め、いにしえの大王アクシスと魔術師ケインの物語を読み解いていく。一方、新女王テッサラは、レインの初代女王マーミオンの霊から、茨に気をつけよとの警告を受ける。

 マキリップを読むのは『妖女サイベルの呼び声』『影のオンブリア』に続いて三冊目。
 この小説はいくつかの話が並行して進んでいくスタイルをとる。主にネペンテスとボーンの恋愛譚、レインを保とうとする女王テッサラと後見人ヴィヴェイの話、ネペンテスが解読を進めるケインとアクシスの話などが主な筋で、視点人物もネペンテス、ボーン、テッサラ、ヴィヴェイ、ケインなど章ごとに交代していく。これらの筋の関係が中盤から見え隠れし始め、終盤に至って(時間軸の異なるケインの筋も含めて)一気に収束するあたり、ほどよく緊張させてくれてよい。エンターテイメントの王道といったところか。
 ところで、若い女王テッサラの台詞まわしが、断定調というかやや男言葉寄りな感じ(『ハヤテのごとく!』の三千院ナギの喋り方とか、ああいう感じ。多弁じゃないけど)になっているのが、可愛いけれども原作でどうなっているのか気になった。
 相変わらず安心して楽しめるクオリティのファンタジーを提供してくれる良い作家だ。