ウィリアム・シェイクスピア『終わりよければすべてよし』
積読が増えてきたらまず戯曲から片付ける。コレ基本。
- 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1983/10/01
- メディア: 新書
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「それに、処女ってやつはわがままで、高慢ちきで、ものぐさで、うぬぼれで凝り固まっている、これは聖書が第一に禁じている罪ですよ。そんなものを大事にとっておくことはない、損するだけです、お捨てなさい! そうしたら一年たらずで二つになります。いい利殖じゃないですか、しかも元金は減らないんですよ。さっさと手放してしまいなさい!」
「それを自分の好きなように手放すには、どうしたらいいのでしょう?」
「そうだなあ。ま、裏切ることですね」(16ページ)
ロシリオン伯爵夫人のもとで養育されている、名医ジェラードの遺児へレナは、伯爵夫人の子バートラムに恋していた。ヘレナは身分の差を乗り越えるため、フランス王の命を救い、褒美としてバートラムを夫にする権利を得る。しかしバートラムはヘレナを嫌ってフランスの宮廷を出奔し、フローレンス伯爵のもとに身を投じる。ヘレナはバートラムを追いかけ、その妻になるため策をめぐらす。
「問題劇」の一つに数えられる作品で、筋立てを不自然に感じる批評家も多かったと解説では指摘されているが、よりめちゃくちゃな『ヴェローナの二紳士』を読んだばかりだったせいか、さほど違和感を感じることなく読み終えた。
普通そこまでやるかよ、というヘレナの知略、行動力、大胆さが作品の売り。これに対する男主人公バートラムのだまされっぷりも楽しい。考えてみるとこいつも不憫といえば不憫だ。好きでもない女(いくら綺麗で頭がよかろうと)と王の命令で無理矢理結婚させられるわけだから。もちろん、終盤の彼の不実な行動ぶりには弁解の余地はなく、ヘレナと連れ添わされていい気味ではあるが(きっと尻に敷かれるんだろうな)。
あとは副筋の主役たるペーローレスのコミカルな言動も一見の価値あり。第一幕のペーローレスとヘレナの品のない対話は必見である。