ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ『タウリス島のイフィゲーニエ』
で、次は古典主義劇という名の近代劇ね。
- 作者: ゲーテ,片山敏彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1951/11/05
- メディア: 文庫
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「どうにもやむを得ずにする行いは忘恩ではありません」
「忘恩なことはどこまでも忘恩なことです。やむを得ないというのは口実です」
「神々に対しても人々に対しても、あなたにとって充分正当な言いわけになることです」
「私自身の心だけは、どうしてもうしろめたさを消せません」
「あんまり厳格に考え過ぎるのは、お心の奥に隠れている高慢のせいですよ」
「自分の心を吟味して理屈をつけているのでなく、ただそう感じないではいられないのです」(121ページ)
エウリピデスの劇をふまえて書かれた作品。大筋はエウリピデスの『イピゲネイア』と同じだが、タウリスのトーアス王がイフィゲーニエの感化で生贄の儀式をとりやめていること、王がイフィゲーニエを妻に望んでいること、の二つの設定が異なっている。
結末部分をのぞけば展開はエウリピデスのものとほとんど同じなのに、なんとまあ全然違う作品に仕上がっていること。根本的な違いは、エウリピデスのは劇的事件を中心にしているのに対して、ゲーテのはそれに加え登場人物の意志が大きな役割を果たしているところ。調和をいい、古典を尚ぶといっても、やはりゲーテは近代作家だなという気がする。