書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

海外文学初心者向け岩波文庫まとめ

http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51586752.html
 このまとめを見ていて、岩波文庫へのイメージが古いまんまな人が多いように感じたので、90年代以降に出た、比較的とっつきやすそうな岩波文庫を羅列してみる。赤帯オンリー。
 というかこういうスレが立つこと自体が岩波文庫ファンとしては悲しい。そもそも初心者向けとか言われるリストが70年代くらいから変わってないのが悪い。もっと新しい時代向けの本(≠新しい本)を見て欲しい。*1
 正直このブログを見てる海外文学廃人さんには不要かもしれないと思ったりするけど、書きかけたので書く。
 岩波は重版も多いし、この年代のものはそれなりの古本屋へ行けば簡単に手に入る場合も多いので、現時点で品切れしてるものも入れておくよ。

聊斎志異〈上〉 (岩波文庫)

聊斎志異〈上〉 (岩波文庫)

 とっつきやすさとなれば、中国文学のみならず赤帯全部を見渡してもコレにかなうものはない。

西遊記〈1〉 (岩波文庫)

西遊記〈1〉 (岩波文庫)

 この小説をバカにしてる人はまず最初から最後まで読んでみるべき。せめて一巻だけでも。

デイヴィッド・コパフィールド〈1〉 (岩波文庫)

デイヴィッド・コパフィールド〈1〉 (岩波文庫)

 訳文の平易さは新潮文庫版と一行読み比べれば分かるレベル。それゆえ嫌いな人も多いようだ。センター試験終了日に本屋に駆け込んで四巻を買った(当時刊行途中だった)のも良い思い出。

白衣の女 (上) (岩波文庫)

白衣の女 (上) (岩波文庫)

  • コリンズ『白衣の女』

 19世紀イギリスのゆったりミステリー。サラ・ウォーターズとか好きな人ははまると思う。

クオ・ワディス〈上〉 (岩波文庫)

クオ・ワディス〈上〉 (岩波文庫)

 岩波でしか読めない歴史エンタメといえばこれ。

嘘つき男・舞台は夢 (岩波文庫)

嘘つき男・舞台は夢 (岩波文庫)

 古典喜劇入門に最適/メタフィクション演劇入門に最適、という謎カップリング。

モーパン嬢〈上〉 (岩波文庫)

モーパン嬢〈上〉 (岩波文庫)

  • ゴーチエ『モーパン嬢』

 男装少女モノですよ!

制作 (上) (岩波文庫)

制作 (上) (岩波文庫)

  • ゾラ『制作』

 『居酒屋』は長いしキャラもごちゃってるということで、ゾラを最初に読むならこれを選んでもいいと思う。これで物足りないなら『ジェルミナール』へ!

陽気なヴッツ先生 他一篇 (岩波文庫)

陽気なヴッツ先生 他一篇 (岩波文庫)

  • ジャン・パウル『陽気なヴッツ先生』

 脱線ユーモア系。これは初心者向けではない気もするが、『トリストラム・シャンディ』よりはだいぶとっつきやすいかと思われるので一応。短いし。

われら (岩波文庫)

われら (岩波文庫)

悪魔物語・運命の卵 (岩波文庫)

悪魔物語・運命の卵 (岩波文庫)

 ソ連文学の双璧。ここからさらに『巨匠とマルガリータ』に、そして現代のソローキン、ペレーヴィンに進むのが常道。

*1:いまさら『トニオ・クレーゲル』とかねーよ。あの本の主人公、コンプレックスまみれのくせに目線がいつも上からで鬱陶しいこと極まりない。『山月記』を読んだ人間にはあの小説は不要。