オシップ・マンデリシュターム『石』
久しぶりマンデリシュターム。やっぱりきちんと中身を理解することはできない詩が多いのだけれど、この静謐で冷然たる空気はやはりなかなか心地良いもの。それにしても詩の感想を書くのは実に難しい。
- 作者: オシップマンデリシュターム,早川真理
- 出版社/メーカー: 群像社
- 発売日: 1998/07
- メディア: 単行本
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バーチュシコフの尊大さがぼくには厭わしい。
「何時ですか?」とここで訊かれたのに、
彼は物見高い人々に「永遠です」と答えたそうだ。(50ページ)
マンデリシュタームの処女詩集。
古くはギリシアの古典、近くはディケンズや映画作品を踏まえて書かれた作品もあれば、モスクワなど都市の光景をうたったもの、自己の内面を詠んだものなど内容は多彩だが、端正な詩句と静謐な雰囲気は詩集全体に一貫している。『トリスチア』と同様に世の不安や暗黒を歌った作品が多く、どちらかといえば冷たく陰気な空気が強いが、テニスやアイスクリームをうたった快活な作品もある。ことに「テニス」の詩なんかはほとんどラブコメの域に入っている気さえする。
荒々しい情熱の炎をしずめ
アルプスの雪でその身をよそおい
おてんば娘と相対し
オリンポスの試合についたのは誰?