書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

S.T.アクサーコフ『釣魚雑筆』

釣魚雑筆 (岩波文庫)

釣魚雑筆 (岩波文庫)

 二部構成の釣りの本。第一部は竿の作り方や釣り場所の選び方など釣りの技術的なことを記し、第二部は魚の生態について書く。全編が淡水での釣りの話で、海での釣りについては記載していない。

 私は釣りはやらないのだけれど、著者の釣りへの愛情と、さっぱりした語り口が楽しくて一気に読ませてくれた。まず釣竿を自作する方法(材料の木の選び方や釣り糸の綯い方まで)から書き始めるのだが、これがもうやたら楽しそうに書いてあるのである。魚の生態描写や釣りのときの格闘の描写なんかも非常に生彩があって、確かにこれは散文芸術の域だと言っていいと思う。題材は違うけれどちょっと『ファーブル昆虫記』を思い出した。
 いい本です。釣りに関心がなくても面白く読めるかと。気晴らしにぜひ。