エルフリーデ・イェリネク『レストハウス、あるいは女はみんなこうしたもの』
しばらく睡眠不足がひどくて、本をあまり読み進められなかった。これもようやく読了。
というわけでドイツ現代劇・五冊目。論創社のドイツ現代戯曲選の最新刊。
ノーベル賞作家ということで、たぶんこのシリーズでは一番有名な作家だろう(張り合えそうなのはハイナー・ミュラーくらい?)。ただ、これまで読んだ五冊のドイツ現代劇のうち、作品としての価値はともかく、私の趣味からは一番遠い本ではあったかな。先に刊行された『汝、気にすることなかれ』のほうを読んだほうが良かったかも。

レストハウス、あるいは女はみんなこうしたもの―喜劇 (ドイツ現代戯曲選)
- 作者: エルフリーデイェリネク,Elfriede Jelinek,谷川道子
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2007/05
- メディア: 単行本
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そもそも彼女たちは、いつも僕たちをちゃんと正しく理解してきた。だから僕たちには彼女たちを正しく理解する必要がないんだ。(42ページ)
イゾルデとクラウディアは、それぞれの夫であるクルトとヘルベルトに頼んで、高速道路の休憩所に立ち寄る。彼女たちはそこで「獣さん」と逢引きをする手はずになっていたのだが――。
筋書きだけ見れば、この作品はもうチープなポルノ以外の何物でもない(わざわざチープに演出するように指示しているト書きまである)。そういう安手のストーリーを借り、現代の男性女性双方の性の問題をグロテスクに描くことが作者の目的らしい。実際のところ、猥褻な場面を読んでいても、興奮するというより馬鹿馬鹿しさに笑えてくる。
卓抜な表現や独創的な警句はあちこちに見え、さすがノーベル文学賞を取るだけのことはあると思わせられた。もっとも、現代人のセックスとジェンダーの問題にはさして関心がない私にとっては、さして面白いと思える作品ではなかったけれど。