書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

私家版世界十大戯曲

 私家版世界十大小説 ――after game over
 先日来流行の「世界十大小説」。はじめは正統派古典中心のラインナップを組んだ方が多かったが、やがてSFの十大小説を選んだ人(十大小説が流行っている……ああ、もう我慢できない! 私もやるぞ! ――万来堂日記2nd)、ミステリで選んだ人(世界十三小説〜異色ミステリ編 ――「エフエフッ」)、ライトノベルで選んだ人(私家版ライトノベル十大小説 ――雲上四季)、現代文学のみで組んだ人(私家版世界十大小説 ――読書その他の悪癖についてって、手前味噌でゴメン)などが現れ、さまざまなジャンルで十大傑作が選ばれたようだ。――うーむ、この関連の記事を見ていると、楽しいし勉強になるし一石二鳥だのう。
 でもどうやら、まだ戯曲の十大傑作を選んだ人はいないらしい。ならばひとつ私がやってみよう。

アイスキュロスアガメムノン
シェイクスピアリア王
カルデロン『人の世は夢』
コルネイユ『舞台は夢』
孔尚任『桃花扇』
ユゴー『エルナニ』
ストリンドベリ『死の舞踏』
クローデル『繻子の靴』
ベケットゴドーを待ちながら
ファスビンダー『ゴミ、都市そして死』

 まずはすべての西洋悲劇の原点としてアイスキュロスを。シェイクスピアは複雑さのハムレット、完成度のオセロー、不気味さのマクベス、猟奇のタイタスと迷ったけれど、スケールのリアを選んでおく。そして華麗な言辞をほこる『人の世は夢』をスペイン代表として、早すぎたメタフィクション『舞台は夢』を古典主義代表として加える。さらに雄大な構成を持つ中国戯曲『桃花扇』を加えて古典劇は五作。残り半分は近代劇で埋めることにして、まずは古典主義を打倒した『エルナニ』。そして激烈な会話が魅力のストリンドベリ。20世紀からは、『桃花扇』『リア王』すら小さく見える巨編『繻子の靴』と、対照的にあまりの小ささから不安感をもたらす『ゴドーを待ちながら』を加え、最後に戦後世界の混沌っぷりを俗悪に描く『ゴミ、都市そして死』を現代文学代表として入れる。
 ゲーテの『ファウスト』、フローベールの『聖アントワヌの誘惑』は内容をつかみきれていないので、チェーホフは未読なのではずした。この弱点に目をつぶれば、案外バランスの取れた選出になってると思うけどどうでしょ?